2014年12月17日水曜日

第7回 「参火会」12月例会 (通算371回) 2014年12月16日(火) 実施

「昭和史研究の集い」 第5回目 「太平洋戦争勃発」 昭和16年

進行役・谷内秀夫氏

「NHKの映像をもとにしたDVDの視聴」



(おもな内容)

ニュース映画を全国で強制上映実施、東条陸相「戦陣訓」(生きて虜囚の辱を受けず…)を示達、松岡外相がソ連経由で独・伊訪問に出発、日ソ中立条約調印、ハル国務長官・野村吉三郎大使との日米交渉開始、日本軍・南部仏印進駐、米国在米日本資産を凍結、米英両首脳が大西洋憲章発表、「国民勤労報国協力令」公布、小学校を「国民学校」と改称、「生活必需物資(米・酒・木炭・塩・味噌・醤油・衣料品など)統制令」を布告、大学・専門学校修業年限短縮、李香蘭が日劇に出演、左翼出版物一括発禁、ゾルゲ事件で尾崎秀実検挙、全国一斉に防火演習を実施、東条英機内閣成立、御前会議、日米交渉決裂、御前会議が日米英蘭開戦決定、日本軍ハワイ真珠湾を攻撃、日本軍東南アジア海域を征圧、日・タイ同盟条約調印……など。

「この時代の概要」

昭和16年は、重苦しい雰囲気の中でスタートしました。中国との全面戦争はドロ沼化し、いつ解決するかの見通しの立たないまま、前年9月に「日独伊三国同盟」をむすび、同時に「北部仏印進駐」しました。これに対しアメリカは、航空燃料・鉄鋼などの対日輸出禁止の経済制裁に出ました。国民生活は戦争の長期化と拡大のため、経済困惑は激しさを増し、生活必需品の欠乏は目に余るものとなります。

近衛政府は4月、ハル米国務長官・野村吉三郎駐米大使との日米交渉を進めるいっぽう、日本軍は7月、石油、ゴム、アルミなどの資源を求めて南部仏印に進駐を開始しました。この行動はアメリカの態度をいっそう硬化させ、対日石油輸出禁止、在米日本人の資産凍結など強硬な手段に出ました。ハル国務長官・野村大使との日米交渉も行き詰まり、見通しを失って近衛内閣は総辞職、10月に日米開戦に強硬な東条英機内閣に代わりました。

こうして、昭和16年12月8日、日本は米英蘭に宣戦布告、海軍はハワイオアフ島の真珠湾を攻撃、陸軍はイギリス領マレー半島への上陸作戦に出ました。中国との戦いに大苦戦している上に、大国アメリカ・イギリスを敵にまわし、さらにチャンスがあれば、ドイツと手をつないでソ連を攻撃しようとする日本。ドイツの力を過信し、まさに破れかぶれの決断でした……。


DVDの視聴後、前回に引き続き、外務大臣松岡洋右の行動についての話し合いがもたれました。松岡は、3月から4月末まで、ソ連経由でドイツを訪問しヒトラーと会見して意気投合、独断でソ連スターリンと面談して「日ソ中立条約」に調印しました。いっぽう4月初めからスタートした日米交渉で、米ルーズベルト大統領と近衛首相がハワイかアラスカでトップ会談を行うことが決まり、近衛首相以下、陸・海相ほか全員が賛成しました。

ここですぐに了解の返事をだせば、歴史は変わったかもしれません。ところが近衛は「もうすぐ松岡が帰ってくる。松岡の意見もきこう」といい、帰国した松岡はこれに猛反対、「これは陸軍の陰謀。オレがアメリカとの交渉をうまくやる」という最悪の決断をしました。それから2か月後にドイツが550万人の大軍でソ連に侵攻を開始すると、「南進よりも北進してソ連と戦うべし」といい出します。これには昭和天皇もあきれ、独白録に「松岡は、ヒトラーに買収されてきたに違いない。国際信義を無視する松岡をクビにせよ」といったとされ、近衛は7月17日に総辞職し、松岡から豊田外相に代えただけの第3次近衛内閣を成立させたのでした。

日本の不幸は、せっかくのルーズベルトとの会談をのがした貴族出身おぼっちゃま宰相近衛の行動の甘さ、自信過剰で饒舌家の松岡を内閣の中枢においたことではないかの指摘や、天皇の責任問題まで話が進みましたが、そのへんの議論は、今後の会のテーマとすることになりました。

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後半30分間は、メンバーの反畑誠一氏から、監修者として11月18日に刊行した書籍についてのお話をうかがいました。

タイトル『うたのチカラ─JASRACリアルアカウントと日本の音楽の未来』(集英社刊)
著者─JASLAC創立75周年記念事業実行委員会
監修=反畑誠一



プロローグ それは"旋風"からはじまった 筆者・反畑誠一


  • 第1章「音楽著作権75年の物語」 筆者・反畑誠一
  • 第2章「すべてはあの創成期に始まった」: 現JASRAC会長の作曲家・都倉俊一(作詞家・阿久悠と組んで、山本リンダの「こまっちゃうな」をはじめ、「ペッパー警部」などピンクレディのすべての作品をてがけ、1000曲以上のヒット曲とレコード売上4000万枚のヒットメーカー)へのインタビュー
  • 第3章「リアルカウント32年と日本の大衆音楽」: 過去32年間の上位著作権料を獲得した曲一覧他
  • 第4章「ディアソングス─生まれてきてくれてありがとう」: 「東京ブギウギ」にはじまり、「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」「時代」「北国の春」「いい日旅立ち」「舟歌」「居酒屋」「天城越え」「涙そうそう」など、時代のエポックとなった歌が生まれた背景を、関係者に取材したレポート
  • 第5章「鼎談 愛される歌、日本人が本当に好きなうたとは?」


以上、400ページをこえる大作で、このような『現代音楽史』ともいえる本が、私たちのメンバーの中から生み出されたことが誇らしく思えるという印象です。時間の都合で、次の機会に、「『ユーチューブ』と著作権」をテーマにした話し合いをすることになりました。

「参加者」(五十音順・敬称略)

  • 岩崎学
  • 植田康夫
  • 小林宏之
  • 酒井猛夫
  • 酒井義夫
  • 菅原勉
  • 谷内秀夫
  • 反畑誠一
  • 鴇澤武彦
  • 増田一也
  • 山本明夫