2019年12月18日水曜日

第61回「参火会」12月例会 (通算425回) 2019年12月17日(火) 実施

「世界遺産を考える集い」第21回目 「世界遺産 第2シリーズ」 ⑥ ヨーロッパⅢ─1

2019年4月から再スタートした「世界遺産第2シリーズ」(DVD10巻)は、2003年から数年間にわたってNHKがユネスコと共同しながら制作・放送してきたものを、小学館が地域別に再編集し「NHK世界遺産100」(1~5巻) 「NHK世界遺産100」(6~10巻) として刊行したもので、各巻20か所・計200か所を収録しています。第1シリーズ (本田技研の系列会社「ピーエスジー」制作の12巻) によるDVDと重複するものは約半分ありますが、重複するものは特に重要な世界遺産といっても過言ではありません。小学館版「NHK世界遺産100」は、各世界遺産へのアプローチの仕方に独自性があります。

会のはじまりは、下記資料「2-6-1~10」がすでにメンバーに渡され、全員がこれを読んだ上で、「NHK世界遺産100」第6巻目の映像約90分のうちの前半 (2-6-1~10) 約45分を視聴しました。




2-6-1   ナポリ歴史地区 既出1-3-4
文化遺産 イタリア 1995年登録 登録基準②④ 
◇ 大国支配の歴史を物語る街並み
東にベスビオ山、南にナポリ湾を擁する風光明媚な観光都市ナポリだが、その歴史は外国勢力侵略の歴史でもあった。町の起源はBC5世紀にギリシャ植民都市として建設された。その後さまざまな国の支配下で独自の文化を発展させた。トマトがもたらされたのはスペイン支配時代。イタリア統一後、ナポリを初めて訪れた国王夫妻を歓待するためトマト・バジル・モッツァレラチーズで国旗の色を表現したピッツァが作られた。皇后と同名のナポリ名物「ピッツァ・マルゲリータ」だ。

2-6-2 ポルトヴェーネレとチンクエ・テッレ
文化遺産 イタリア 1997年登録 登録基準②④⑤ 
● 人間の手によってできた自然の景観
イタリア北部リビエラにあるポルトヴェーネレは、荒々しい断崖と険しい山にはさまれた城塞の町で、もともと町全体かジェノバの築いた出城だった。この町の北西10~30kmにあるチンクエ・テッレ(「5つの土地」の意)は5つの村からなっている。これら一帯は、ブドウ造りと漁業が主産業で、おいしいワインと肉厚のムール貝が観光客に大人気。村と村の行き来は、20世紀までは船だけが頼りだったという。

2-6-3 パリのセーヌ河岸 既出1-2-4
文化遺産 フランス 1991年登録 登録基準①②④
◇ 歴史とともに歩む芸術の都
世界の大都市でもパリほど、過去から現在まで、政治・経済・産業・文化・科学・芸術など、あらゆる分野の活動が一極集中している例は、他には見当たらない。見どころも多く、その景観を守るため、正面から見たときの人間の視野を遮るものの建設を禁止する「フュゾー規制」が定められている。

2-6-4 アルク・エ・スナン王立製塩所
文化遺産 フランス 1982年登録2009年範囲拡大 登録基準①②④ 
● 夢に終わった計画都市
フランス東部ブランソン近くにあるアルク・エ・スナン王立製塩所は、ルイ16世治世下の1775年に、クロード・ニコラ・ルドウにより設計・建設が始まった。この製塩所関連施設の周囲に病院、聖堂などを円形に配置することで労働組織の効率化をめざした。フランス革命により、ルドウの夢は半円形の状態で終わったものの、機能と美を追求し理想の都市を作るという壮大な実験は、次世代の工業都市の規範となった。2009年には、フランスの塩生産の歴史を示すもののとして、サラン・レバン製塩所が登録資産に含まれた。

2-6-5   オランジュのローマ劇場と凱旋門
文化遺産 フランス 1981年登録2007年範囲変更 登録基準③⑥
● ローマ帝国の栄光を今に伝える劇場と凱旋門
フランス南部プロバンス地方にあるオランジュは、ローマ時代以前から栄えていたケルト人の町で、BC1世紀にローマ植民地となり、今も古代ローマ遺跡がほぼ完全な状態で残っていることで知られている。とくに劇場は、ローマ遺跡の中でも最大規模で37段、1万人を収容した。舞台の幅は103m、背後の装飾壁は36mの高さがあり、その中央に3.5mもあるアウグストゥス帝の大理石像が観客席を威圧する。この劇場で毎年6~8月に野外音楽祭が開催され、多くの観光客が訪れる。「凱旋門」と呼ばれている門は、町の建設記念門。

2-6-6 リヨンの歴史地区 既出1-2-9
文化遺産 フランス 1998年登録 登録基準②④
◇ 2000年の歴史をもつ商業と文化の要衝
リヨンは、ソーヌ川とローヌ川の合流点に位置し、町の起源はBC1世紀のローマ時代にさかのぼる。当時から交通の要衝で、商業都市、行政都市として栄えた。しかし、2世紀ころローマ皇帝に敵対したアルビヌスに味方したためローマ軍から攻撃され衰退していった。13世紀に絹織物業が少しずつ栄えはじめ、16世紀に出版業の中心地になり、18~19世紀にはナポレオンの保護もあってヨーロッパ最大の絹織物産地に成長した。町の北にある「絹の丘」には絹織物工房が何千と集まり、屋根のある通路「トラブール」で町の中心に運ばれる絹織物は、全世界へ輸出された。

2-6-7 ポン・デュ・ガール
文化遺産 フランス 1985年登録2007年範囲変更 登録基準①③④
● 高度な建築技術を今に伝える古代ローマの水道橋
フランス南部ニーロ近郊のガール川に架かるポン・デュ・ガール(「ガール川を渡る橋」の意)は、BC19年頃に、古代ローマの政治家アグリッパが水を供給させるためわずか5年で建造された全長50kmもの水路のうちの一部(長さ275m、高さ49m)で、3段のアーチで構成された幾何学的な美しさを誇り、完成から2000年も経った今も、ほぼ完全な姿をとどめている。

2-6-8 海事都市グリニッジ
文化遺産 イギリス 1997年登録 登録基準①②④⑥ 
● 海洋王国イギリスの表玄関
「緑の村」を意味するグリニッジは、ロンドン東部テムズ川沿いに位置し、ここにある旧王立天文台は、1675年、チャールズ2世の命で建設された。1884年、国際子午線会議で、この天文台を通る経線を経度0の地点とし、ここを太陽が通過する時刻を正午とする国際標準時(グリニッチ標準時)が定められた。大英帝国が7つの海に乗り出し、世界各地を支配した時代だが、その成功の裏には、船の位置を正確に割り出すため、経度と緯度を測定するグリニッジ天文台の天体観測技術と大工のハリソンが発明した時計の存在があった。

2-6-9 ウエストミンスター宮殿と修道院 既出1-1-9 
文化遺産 イギリス 1987年登録2008年範囲変更 登録基準①②④
◇ イギリス王室の歴史を刻む壮大な建築物群
「話し合いで問題を解決する」という議会制民主主義誕生の舞台となったのが、ロンドンの中心部にあるウエストミンスター宮殿と修道院。修道院内のチャプターハウスは、貴族と国王が税の軽減をめぐって話し合った議会政治の原点。宮殿は国会議事堂となり、今も議会政治開催の場。2008年には、由緒あるセント・マーガレット聖堂が加わった。

2-6-10  修道院の島ライヒェナウ 
文化遺産 ドイツ 2000年登録 登録基準③④⑥
● 中世に栄えた信仰の島
「幸せな島」を意味するライヒェナウ島は、スイスとの国境にあるボーデン湖に浮かぶ最大の島で、19世紀にナポレオンによって閉鎖されるまでの約1000年間は、25の宗教施設が建てられた修道院の島だった。中世の初めには、中央ヨーロッパ美術の中心で、島の南東部にある888年建造のザンクト・ゲオルグ聖堂には、ロマネスク以前オットー期の壮麗な壁画で知られる。中央部には816年建造の宝物庫を備えたザンクト・マリア・マルクス大聖堂があり、北西部には12世紀に建造されたザンクト・ペトロ・パウロ聖堂にあるフレスコ画は、ドイツ初期ロマネスク美術の遺例として希少価値が高い。


なお、「参火会」会員にはすでにお知らせいたしましたが、前回11月19日の「参火会」において、会長の酒井義夫が、2020年10月20日を最後に、「参火会会長」を辞任したいことを表明し、了承されたことをお知らせいたします。
辞任理由は、この数か月のハードな毎日が要因で体調を崩したことと、3か月ほど前に生涯を通してやり遂げねばならないプロジェクトを立ち上げたためです。酒井は、2014年5月から「参火会会長」を仰せつかりました。その後5年半、32回にわたる「昭和史を考える集い」、20回にわたる「世界遺産を考える集い」など、11月例会で60回目となった「参火会」を一度も休むことなく開催させていただきました。またその間、これまでの「壱火会」が任意団体だったのを、「ソフィア会」の正式団体に登録させてもらうなど、私なりに努力を重ねたことで、亡鴇沢武彦氏や竹内光氏が創設された「壱火会」という貴重な会を通算424回という長期にわたり継続させることができました。いきさつ上、「参火会」前半にDVD視聴を行っている「世界遺産第2シリーズ」が終了する2020年10月までは、責任を持って会長職を続ける覚悟です。

今回の「参火会後半」は、副会長の谷内秀夫氏が進行役になって、今後の会をどのように進行するかの話し合いをいたしました。毎回2~3名が近況報告することを基本とすること。また、たまたま12月15日の午後6時から放送された『TBS世界遺産』の映像を投射したところ、今年世界遺産に登録された仁徳天皇陵を中心とした「百舌鳥・古市古墳群」であり、11月の参火会で話し合われたばかりのテーマだっただけに、全員の注目が集まりました。もっと見たいという声もあがったことで、酒井が所有している最近2年間に放送された『TBS世界遺産』の96回分の映像内容を次回、全員に配布することになりました。
(文責・酒井義夫)


「参火会」12月例会 参加者
 (50音順・敬称略)



  • 小田靖忠  文新1966年卒
  • 草ヶ谷陽司 文新1960年卒
  • 郡山千里  文新1961年卒
  • 酒井義夫  文新1966年卒
  • 菅原 勉  文英1966年卒
  • 竹内 光  文新1962年卒
  • 谷内秀夫  文新1966年卒
  • 反畑誠一  文新1960年卒
  • 向井昌子  文英1966年卒
  • 山本明夫  文新1971年卒