2019年10月16日水曜日

第59回「参火会」10月例会 (通算423回) 2019年10月15日(火) 実施

「世界遺産を考える集い」第19回目 「世界遺産 第2シリーズ」⑤ アフリカ・南北アメリカ Ⅰ-1

4月から再スタートした「世界遺産第2シリーズ」(DVD10巻)は、2003年から数年間にわたってNHKがユネスコと共同しながら制作・放送してきたものを、小学館が地域別に再編集し「NHK世界遺産100」(1~5巻) 「NHK世界遺産100」(6~10巻) として刊行したもので、各巻20か所・計200か所を収録しています。第1シリーズ (本田技研の系列会社「ピーエスジー」制作の12巻) によるDVDと重複するものは約半分ありますが、重複するものは特に重要な世界遺産といっても過言ではありません。小学館版「NHK世界遺産100」は、各世界遺産へのアプローチの仕方に独自性があります。

会のはじまりは、下記資料「2-5-1~20」がすでにメンバーに渡され、全員がこれを読んだ上で、「NHK世界遺産100」第5巻目の映像約90分のうちの前半 (2-5-1~10) 約45分を視聴しました。





2-5-1   大ピラミッド群 (メンフィスのピラミッド地帯) 既出1-7-2
文化遺産 エジプト 1979年登録 登録基準①③⑥
◇ 世界最長のナイル川流域は穀倉地帯に、絶対的な王(ファラオ)を中心とした古代国家が誕生した。紀元前3000年頃に成立したエジプト第1王朝で、その繁栄の象徴が紀元前2550年頃につくられた第4王朝クフ王の大ピラミッド。およそ2.5tの石を300万個を積み上げ、高さは40階建ビルに相当する巨大な建造物だ。カフラー王、メンカウラー王のピラミッドとあわせ、「ギザの3大ピラミッド」と呼ばれる。

2-5-2 ティムガッド(の考古遺跡)
文化遺産 アルジェリア 1982年登録 登録基準②③④
● トラヤヌス帝治世下に建設された植民都市遺跡
アルジェリアの北東部の高原にあるティムガッドは、ローマの最盛期に存在した五賢帝の一人トラヤヌス帝が、100年ごろに退役軍人の入植地として築いた典型的なローマの植民都市。デクマヌス通りとカルド通りという2本の大通りが交差する約350m四方の正方形の町で、約20m四方の街区に区画されていた。上下水道システムは現代にも負けない完備と規模を誇り、3500人も収容できる円形劇場や公会堂、図書館、14か所の大浴場もあった。広場の落書きに「狩りをし、ゲームをし、笑う。それが人生だ」とあり、当時の住民の優雅な暮らしぶりがしのばれる。しかし、7世紀に入ってアラブ人の侵入を許すと住民は町を放棄し、8世紀の大地震で砂の中に埋没してしまった。1880年に発見されたときは非常に保存状態がよく、「アフリカのポンペイ」とも呼ばれている。 

2-5-3 フェズ旧市街 既出1-7-5
文化遺産 モロッコ 1981年登録 登録基準②⑤
◇ モロッコ1000年の古都フェズ旧市街は、首都ラバトの東170km、セブ川中流の標高370mの盆地に位置する。2.2㎞×1.2㎞の城壁に囲まれており、複雑な街並みから「世界一の迷宮都市」と呼ばれている。今でも車は入れず運搬の主役はロバ。ほとんどの人々は、町外に出ることなく一生を終えるという。

2-5-4 ジェンネ旧市街
文化遺産 マリ 1988年登録 登録基準③④
● 交易で栄え「天国」と名付けられたマリの古都
西アフリカにあるマリ南部のニジェール川とその支流の中州地帯に位置するジェンネ旧市街は、13世紀末から発展した水上交易の中継地で700年の歴史がある。16世紀末にモロッコ軍に征服されてしまったが、14~16世紀にかけて栄華をきわめた。旧市街の名を高めているのは、町の中央部に聳える大モスクで、基底部56m四方高さ11mもあり、14世紀に創建され、20世紀初めに再建された。日干しレンガを積み上げ、表面に黄土色の泥を塗った独特な工法(スーダン様式)で築かれている。1年に1度、風雨に汚れたモスクの泥壁を人々が総出で塗り直す作業は、町のビッグイベント。毎週月曜日の朝には、大モスクの前の広場で食料や衣服の市が開かれ、さまざまな部族の人々が色とりどりの民俗衣装をまとって集まってくる。その賑わいは交易都市として栄えた以前の姿を彷彿とさせる。

2-5-5 ラリベラの岩窟教会群
文化遺産 エチオピア 1978年登録 登録基準①②③
● 岩を掘って作られた驚異的キリスト教聖堂群
エチオピア高原の北東部、標高約3000mの高地に、ザグウェイ朝の第7代国王ラリベラの命により12~13世紀に築かれた11の岩窟聖堂が残っている。伝説によると12世紀末に聖地エルサレムがイスラム教徒の手に渡ってしまったことで、ラリベラ王は「新たなエルサレムを築け」という神の夢告に従って、この地に都を移し、天然の一枚岩を掘り下げるという特異な工法を用いてわずか20年ほどで完成させたとされる。この工法は、現代の技術でも再現できないほど高度なもので、第1岩窟教会群には6つの教会、第2岩窟教会群は5つの教会で構成され、ヨルダン川をはさんで南北にある。1月7日(エチオピア暦のクリスマス)には、「一生に一度は聖地ラリベラで祈りたい」という熱心な巡礼者でふくれあがる。ここは、世界で初の世界遺産となった12か所のひとつ。

2-5-6 ケニア山国立公園 (と自然林)
自然遺産 ケニア 1997年登録 登録基準⑦⑨
● 赤道直下にありながら氷河を頂く高峰
ケニア中部にあるケニア山は、アフリカ第2の高峰である5199mの主峰バティアンのほか、標高4900mを超える峰が10座以上あり、山頂部には大小12の氷河がある。世界遺産に登録されているのはケニア山国立公園とその周辺山麓を合わせた1420㎢。標高4000mを超える乾燥した山岳地帯には7m近い巨大化したジャイアントセネシオやジャイアントロベリアなど高山植物が群生していて、ここでは「高地では植物は小さい」という植物学の常識は通用しない。自然林にはアフリカゾウなどの大型動物が、比較的低地にはクロサイやヒョウなどがすんでいる。ちなみに山名であり国名のケニアは、バントゥ語でダチョウを意味し、黒い岸壁と白い氷河や万年雪がダチョウの体毛のように見えるためという。

2-5-7 セレンゲティ国立公園 既出1-8-2
自然遺産 タンザニア 1981年登録 登録基準⑦⑩
◇ タンザニア北部、ビクトリア湖南東岸にあるセレンゲティ高原に位置する。1万4763㎢の国立公園内には広大なサバンナが続いている。移動をくりかえす草食動物の160万頭のヌーや50万頭ものシマウマ。これをねらうライオンやチーター、ジャッカルなどの肉食獣との戦いは、アフリカの大自然ならではの生と死をかけた壮大なドラマ。毎年9月、ヌーの大群がマサイマラ草原からいくつかの群れに分かれ、新しい草を求めて1000kmも離れたセレンゲティ国立公園に移動を開始する。途中の川幅100mもあるマラ川を渡るヌーの姿をカメラが追う。

2-5-8 マラウイ湖国立公園
自然遺産 マラウイ 1984年登録 登録基準⑦⑨⑩
● 生命の進化のカギを握るシクリッドの生息地
四国の1.5倍もあるアフリカで3番目に大きなマラウイ湖の南端にある「マラウイ湖国立公園」は、湖に浮かぶ12の島々を含め94㎢がその範囲。湖面の標高は472mに対し、最大深度は700mを超える。湖には500種類以上の魚類が確認されているが、その中で最も数の多いのがカワスズメ(別名シクリッド)で、その種類はピーコック・シクリッドはじめ400種以上あるがそのほとんどがこの湖の固有種。この魚はオスの求愛に応えたメスは産卵すると素早く卵を口の中に入れて孵化させ、稚魚を外敵から守る習性がある。この不思議な子育ては、ガラパゴス諸島のフィンチとともに、生命の進化を解明する重要な研究材料となっている。1859年探検家のリビングストンがヨーロッパ人として初めてこの湖を発見し、イギリスの植民地となってニアサ湖と呼ばれていたが、1964年の独立を機に旧名称が復活し、国名の由来となった。

2-5-9 ビクトリアの滝 (モシ・オ・トゥニャ)
自然遺産 ザンビア/ジンバブエ 1989年登録 登録基準⑦⑧
● イグアス・ナイアガラの滝と並ぶ世界3大瀑布のひとつ
アフリカ第4の大河ザンベジ川中流にあるビクトリアの滝は、雨季が終わる3月下旬ころには幅1700m以上、落差110~150m、毎分5億リットルもの水が落下する。20kmほど離れた地点からでも水煙が確認できるといわれ、この水煙が周囲を潤しシダやツル植物など900種類もの植物を繁茂させる。20万年前に最初の滝が出来てから、滝の位置は徐々に下流から上流に移動し、現在の滝は最初の滝から80㎞も上流にあるという。浸食は毎年10cmほど進み続けるというから、壮大な滝の旅はまだまだ続く。1855年、リビングストンがこの滝を発見し、当時世界に君臨していた母国の女王にちなんで「ビクトリアの滝」と命名し、やがてこの秘境の大瀑布は西欧社会に知られるようになっていった。

2-5-10 ツィンギ・ド・ベマラハ 既出1-7-11
自然遺産 マダガスカル 1990年登録 登録基準⑦⑩
◇ 世界第4の大島、マダガスカル島の西部には、無数の針やナイフを空に突き立てたような不思議な風景が広がる。これは2億年もかけて石灰岩と大雨がつくりあげた奇観で、1520㎢もある自然保護区内の奇岩地帯の谷間には、キツネザルの仲間シファカ、ブラウンキツネザル、アイアイなど、原始の特徴を残したまま、森の木の葉を食べて生き延びている。


会の後半は、メンバーの酒井猛夫が、ここ10年以上もほぼ毎年、冬季40日間・夏季40日間、マレーシアのフレーザーズヒルで「ロングステイ」を夫妻で楽しむ理由、その魅力について、たくさんの書籍や資料を回覧・配布しながら話をしてくれました。そのポイントは次の通り。
マレーシアは、首都クアラルンプールをはじめ標高が低い場所は、年間を通しての平均気温が約28℃。それに対し、フレーザーズヒルは標高が1500mもあるため、年間平均気温が約19℃。100mにつき0.6℃下がるためで、1年を通じて春のようなすごしやすさが一番の魅力。
滞在するホテル「サザン・イン」は、1泊2食付の宿泊代が二人で4800円。NHKの日本語放送が視聴でき、目の前にあるゴルフ場は1か月の使用料が1万円で午前中に1ラウンド、ホテルで昼寝してから午後1ラウンドといった楽しみかたもできる。タクシー代が安いため、たとえばクアラルンプールからフレーザーズヒルまで100㎞以上あるのに料金は1万円。出かけたい場所があればホテルに頼むと、タクシーを用意してくれるのはうれしい。
イスラムの国なので、人口の65%をしめるマレー人は酒を飲まない。でも、20%の中国系人やわれわれ日本人・欧米人が酒を飲んでも誰も気にしない。また、マレーシア人のだれもが親日的なのは、1981年から2003年まで22年間首相をつとめたマハティールが、日本の経済成長を見習おうと「ルック・イースト政策」を掲げ、国力を飛躍的に増大させたことが要因。マハティールは、息子や娘を日本に留学させたり、日本に関する著書を何冊か著すなど熱烈な親日家で、昨年5月に92歳という高齢ながら15年ぶりに首相に復帰し、2020年に先進国入りするという目標をかかげて奮闘中とのこと。
(文責・酒井義夫)


「参火会」10月例会 参加者
 (50音順・敬称略)


  • 小田靖忠  文新1966年卒
  • 草ヶ谷陽司 文新1960年卒
  • 酒井義夫  文新1966年卒
  • 酒井猛夫  外西1962年卒
  • 菅原 勉  文英1966年卒
  • 竹内 光  文新1962年卒
  • 反畑誠一  文新1960年卒
  • 山本明夫  文新1971年卒
  • 蕨南暢雄  文新1959年卒

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