2016年10月20日木曜日

第26回「参火会」10月例会 (通算391回) 2016年10月18日(火) 実施

今回の「参火会」例会は、8月が大学の夏季休暇、9月は台風16号が関東接近のために休会となったため、3か月ぶりの開催となりました。恒例の「昭和史を考える集い」を変更し、メンバーの植田康夫氏が最近出版された『戦後史の現場検証━ルポライターの取材メモから』のお話を聞くことからスタートしました。




この本は、植田氏が大学を卒業後、「週刊読書人」に入社してわずか4年後の1965(昭和40)年に企画、「週刊読書人」に昭和41~43年(3年間)にわたって掲載した松浦総三、青地晨、草柳大蔵、田原総一朗ら第一線のジャーナリスト20名による渾身のルポルタージュ128編を収録した大著 (植田康夫編・創元社刊) です。




はじめに「ルポライターの見た戦後史」として、ルポライターの草分け的存在だった梶山季之と草柳大蔵両氏による対談があり、占領時代の松川事件、60年安保闘争、浅沼事件、東京オリンピックをめぐる裏情報など、「特ダネ」ともいえる内容の数々に、まず驚かされます。

全体の構成は、5章からなり、つぎのような目次になっています。

第1章 戦後理念の揺らぎ
45年(昭和20年)の実像・民主化の陰の人々・消えた民主人民戦線・20年前の保守と革新・戦後財界の黎明・2.1スト中止命令・松川の黒い霧①②③・知られざる言論弾圧①②③・朝鮮戦争と再軍備①~④・レッドパージ①~⑤

第2章 サンフランシスコ講和から血のメーデーまで
昭電疑獄と「中央公論」①②・講和と安保①~⑤・血のメーデー①~⑥・極左冒険主義の陰に①~⑩・「菅生事件」を追って①②・20年代の帰結 青梅事件①②③

第3章 出版界と言論ジャーナリズムの転換
転換するジャーナリズム①~⑭・砂川 そこに戦う人々①~④・長崎国旗事件の背景①②・ミッチ―ブームの裏側①~④・和歌山勤評闘争の背景①②③

第4章 日米安保とジャーナリズムの使命
安保闘争 市民運動の高揚①~⑤・安保闘争 体制側の論理と行動①~⑥・安保闘争 全学連をめぐる混迷・「安保」前後のマスコミ①~⑬

第5章 終わらざる戦後 
三池炭鉱事故の陰に①②・進行する過疎化の実相①②・在日朝鮮人の苦悶①②③・日本の中のベトナム戦争①~⑤・終わらざる戦後①~⑦

タイトルだけ見ただけでも、いかに力の入った企画だったかがわかります。植田氏の、当時を思い出すかのように語る言葉の一つひとつは生き生きとし、特に「松川事件」「下山事件」「帝銀事件」などをめぐる謎の事件が、その裏にアメリカがいたことをにおわす部分など、迫力のあるものでした。そして、連載から50年後にして、創元社の矢部社長という方が、この連載を高く評価し、「今もまったく同じ問題に直面していることに注目」して出版を決意したことも、高く評価したいものです。

それにしても、昨年から『「週刊読書人」と戦後知識人』の刊行、『出版の冒険者たち。(活字を愛した者たちのドラマ)』の出版により、『本は世につれ。(ベストセラーはこうして生まれた)』『雑誌は見ていた。(戦後ジャーナリズムの興亡)』に続く「出版3部作」を完結させ、今回の「日本の今に覚醒を促す」ルポと、立て続けに話題作を連発する姿に、大きな拍手をおくりたいものです。植田氏は、まさに「日本に初めて出版論を学問として確立させた功績者」であり、そういう人物が、私たちメンバーの身近におられることを、誇らしく思います。




その後、メンバーの一人ひとりが、「最近やってきたこと」 「これからやりたいこと」 「今、こころを占めていること」等など……1人3~5分程度の「近況報告」をする予定でした。ところが、鴇沢・反畑・山本・草ヶ谷各氏4名の話をうかがった段階で、時間切れとなってしまい、他のメンバーのお話は、次回以降に順延することになりました。


「参火会」10月例会 参加者
 (50音順・敬称略)


  • 岩崎 学 文新1962年卒
  • 植田康夫  文新1962年卒
  • 小田靖忠 文新1966年卒
  • 草ヶ谷陽司文新1960年卒
  • 郡山千里 文新1961年卒
  • 酒井猛夫 外西1962年卒
  • 酒井義夫  文新1966年卒
  • 菅原 勉 文英1966年卒
  • 竹内 光 文新1962年卒
  • 反畑誠一  文新1960年卒
  • 鴇沢武彦 文新1962年卒
  • 深澤雅子 文独1977年卒
  • 向井昌子 文英1966年卒
  • 山本明夫 文新1971年卒