2019年11月20日水曜日

第60回「参火会」11月例会 (通算424回) 2019年11月19日(火) 実施

「世界遺産を考える集い」第20回目 「世界遺産 第2シリーズ」⑤ アフリカ・南北アメリカ Ⅰ-2

4月から再スタートした「世界遺産第2シリーズ」(DVD10巻)は、2003年から数年間にわたってNHKがユネスコと共同しながら制作・放送してきたものを、小学館が地域別に再編集し「NHK世界遺産100」(1~5巻) 「NHK世界遺産100」(6~10巻) として刊行したもので、各巻20か所・計200か所を収録しています。第1シリーズ (本田技研の系列会社「ピーエスジー」制作の12巻) によるDVDと重複するものは約半分ありますが、重複するものは特に重要な世界遺産といっても過言ではありません。小学館版「NHK世界遺産100」は、各世界遺産へのアプローチの仕方に独自性があります。

会のはじまりは、下記資料「2-5-1~20」がすでにメンバーに渡され、全員がこれを読んだ上で、「NHK世界遺産100」第5巻目の映像約90分のうちの後半 (2-5-11~20) 約45分を視聴しました。




2-5-11 イエローストーン国立公園
自然遺産 アメリカ 1978年登録 登録基準⑦⑧⑨⑩
● マグマが織りなす世界初の国立公園
ロッキー山脈中央部の溶岩台地に位置し、総面積8900㎢(四国の約半分)にも及ぶ。この広大な自然公園のみどころのひとつは、園内のいたるところに見られる熱水現象。平均65分の周期で約4万リットルの温泉を45mも吹き上げるオールドフェイスフルをはじめデイジー、リバーサイドなど多くの間欠泉、水蒸気を噴き出す噴気孔、温泉に含まれる石灰分が固まってできたマンモス・スプリングスなど、園内の熱水現象は1万か所もあるという。ほかに滝、渓谷、大草原、川が蛇行する平原といった景観美、そこにバファロー(アメリカバイソン)、グリズリー(灰色熊)、ムース(ヘラ鹿)、エルク(赤鹿)などの大型野生動物が間近で見られなど、見所はつきない。20世紀末、オオカミの絶滅や生態系の激変、イエローストーン川上流に採鉱計画とかが指摘され、1995年に危機遺産に登録されたが、オオカミのカナダからの移植、採鉱計画の中止などの措置がとられ、2003年に危機遺産リストから除外された。ここも、世界で初の世界遺産となった12か所のひとつ。

2-5-12 カナディアン・ロッキー山脈 既出1-9-1
自然遺産 カナダ 1984年登録1990年範囲拡大 登録基準⑦⑧
◇ ロッキー山脈は北アメリカ大陸を北西から南東にかけて険しい山々が連なる世界的な大山脈のうち、北部カナダ国内に伸びる南北約1500km、幅80kmがカナディアン・ロッキー山脈。1883年に国家的事業として推進された鉄道建設がバンフまで延長され、87年にカナダ初のバンフ国立公園が誕生すると、ルイーズ湖を前景に広がる景色は世界一と称賛されるようになっていった。以後この一帯は、20世紀前半までに次々と整備され、バンフ・ジャスパー・ヨーホー・クートネーの4つ国立公園のほかに3つの州立公園が生まれ、1984年の世界遺産登録と1990年の範囲拡大により、その総面積は2万4000㎢にもおよぶ。今では、年間1千万人以上が訪れるカナダ第1の観光地となっている。いっぽう、氷河に覆われたカナディアン・ロッキーの地層からは、5億3000万年前の生物の多数の化石が発見され、それを組み合わせるとこれまで知られていなかった奇妙な生物があらわれたことで、地球上の進化の痕跡が秘められているという。

2-5-13 シアン・カアン
自然遺産 メキシコ 1987年登録 登録基準⑦⑩
● 神の住む場所としてあがめられた神秘の場所
「シアン・カアン」は、メキシコの南東部、ベリーズとの国境に近いカリブ海沿岸に広がる約5800㎢(千葉県ほど)の自然保護区。湿地、世界2位のサンゴ礁、マングローブ林など17の植生域が存在する。マヤ文化が栄えた地のひとつで、ここには川がなく、マヤ人が神の住家と考えていた場所セノーテ(石灰岩質の台地が陥落した泉・井戸)がいたるところにあり、貴重な水源になっている。セノーテの奥底には無数の鍾乳洞が続き、カリブ海へとつながっている。

2-5-14 ココ島国立公園
自然遺産 コスタリカ 1997年登録/2002年範囲拡大 登録基準⑨⑩
● サメの島と呼ばれる絶海の聖地
コスタリカ本土から約550km東太平洋上に浮かぶこの島は、スチーブンソンの小説『宝島』の舞台にもなった周囲20kmあまりの無人島。年間7000mmの雨が育む深い熱帯雨林に覆われる。最高地点は850mで、海面から崖がそそり立ち、島の名の由来にもなったココナツをはじめ230種の植物80種類の鳥、360種の昆虫が生息する。周囲から隔絶されているため固有種も多い。周辺海域にはマグロやギンガメアジ、スマガツオなどの回遊魚が集まっているため、それらの獲物をねらってシュモクザメやジンベイザメなど多数のサメの世界的生息地となっている。ココ島と周辺の海域を含め約1000㎢が国立公園に指定されている。

2-5-15 ガラパゴス諸島 既出1-10-9
自然遺産 エクアドル 1978年登録/2001年範囲拡大 登録基準⑦⑧⑨⑩
◇ エクアドル本土から西へ約1000km離れた太平洋洋上に浮かぶガラパゴス諸島は、東西300km、南北200kmの海域には、500~100万年前にできた大小約30の島と岩礁からなる。流木や鳥などが運んできた動植物は、隔絶された環境の中で独自の進化をとげ、島ごとに異なる生態系を形成してきた。ダーウィンに「進化論」を構想する契機を与えた島々として知られる。ここも、世界で初の世界遺産となった12か所のひとつ。

2-5-16 カナイマ国立公園
自然遺産 ベネズエラ 1994年登録 登録基準⑦⑧⑨⑩
● 巨大な台地がそびえたつ地球最後の秘境
カナイマ国立公園は、ベネズエラ南東部とブラジルの国境沿いに広がる面積120万㎢のギアナ高地の中心部にあり、中国地方全域に匹敵する約3万㎢の国立公園。風雨によって削られた約20億年前の地層が、標高2000~2800mもの平らな台地となって、標高約1000mの断崖で縁どられている。この台地は「テーブルマウンテン(卓上台地)」といわれ、100以上もあるテーブルマウンテンのなかでも、標高2560mのアウヤン・テプイ(先住民の言葉で「悪魔の山」)からは、落差979mもの世界最長の滝エンジェルフォールが落下する。しかし、滝の水は途中で霧となって飛散してしまうため滝壺がない。こんな岩だらけの世界に生物は独自の進化を遂げ、原始的なカエルをはじめ、多くの固有種が特異な生態系を形作っている。発見された生物の80%近くは固有種で、異種が多い鳥類や昆虫類は、今だに全容解明に至っていない。まさに、人類がいまだ足を踏み入れたことのない数多く残され「地球最後の秘境(ロストワールド)」といえそうだ。

2-5-17 バルデス半島
自然遺産 アルゼンチン 1999年登録 登録基準⑩
● 大西洋に突き出した海生哺乳類、鳥類の楽園
アルゼンチン南部にあるバルデス半島は、南太平洋に斧のように100㎞ほど突き出した面積3600㎢のアルゼンチン最大の半島で、海岸には長さ400㎞もの断崖絶壁が続く。斧の握り手にあたる北のサンホセ湾と南のヌエボ湾は穏やかな内湾のため多く海生動物の楽園となっている。晩秋から初冬にかけては、南極海から3000頭ものミナミセミクジラが集まる世界最大の繁殖地。8月から11月上旬にはミナミゾウアザラシやオタリア(ミナミアシカ)などが集まるが、脅威となるのは海のハンター・シャチで、この季節はむきだしの生存競争が日々繰り広げられる。陸地には30種類以上哺乳類、180種類以上の鳥類が生息する。

2-5-18 ロス・グラシアレス 既出1-10-6
自然遺産 アルゼンチン 1981年登録 登録基準⑦⑧
◇ 「ロス・グラシアレス」とは、スペイン語で氷河を意味し、南米大陸最南端のパタゴニア南部に南極大陸、グリーンランドに次ぐ世界第3の氷河地帯が広がっている。氷河の氷は気泡が少なく透明度が高いため青い色をしている。氷河は2万年もの時間をかけ数百mにおよぶ氷の壁をつくる。運が良ければ大きく崩れ落ちて氷山となるドラマチックな瞬間を目にすることができる。

2-5-19 イグアス国立公園 既出1-10-4・5
自然遺産 アルゼンチン/ブラジル 1984年アルゼンチン/1986年ブラジル登録 登録基準⑦⑩
◇ アルゼンチンとブラジルの国境を流れるパラナ川の支流イグアス川の大瀑布が「イグアスの滝」。単独の滝ではなく、大小270以上の滝が連なり、最高80mの断崖を落下する水量は毎秒平均1750㎡、馬蹄型をなす滝壺の幅は2700mにも及ぶ「世界一の滝」。伝説を生んだ「月の光が作り出す虹」の初撮影に成功した瞬間を、高感度ハイビジョンカメラが追う。

2-5-20 セラード自然保護地域 (ベアデイロス平原国立公園とエマス国立公園)
自然遺産 ブラジル 2001年登録 登録基準⑨⑩
● 乾いた草原が生み出した不思議な生態系
「セラード」とはブラジル中央部の「ブラジル高原」に広がる熱帯性草原(サバンナ)のことで、北部のベアデイロス平原の面積は655㎢、最高点1678mの高地にある。エマス国立公園は南西部にあって、面積は1318㎢、地面から突き出たシロアリの塚が無数に続く。アリ塚は夜になると光を放ちはじめる。ヒカリコメツキムシの幼虫が餌になる羽アリをとるために青い光を放つためで、幻想的な光の裏で小さな命の駆け引きのドラマが展開する。この国立公園は絶滅危惧種のオオアリクイの餌場となっている地域でもある。セラード自然保護地域には、300種以上の鳥類、6万種以上の昆虫、1万種もの植物が見られ、ほとんどが固有種。


会の後半は、メンバーの酒井義夫が最近、京都・奈良・大阪(堺市)をめぐる旅をしてきたポイントをお話しいたしました。まず、① 世界遺産「古都京都の文化財」を構成する17か所のうち、賀茂別雷神社(かもわけいかづち=上賀茂神社)と賀茂御祖神社(かもみおや=下鴨神社)を訪ね、17か所をすべて制覇したこと。次に、② 世界遺産「古都奈良の文化財」を構成する8か所のうち、春日大社、春日山原始林、元興寺(がんごうじ)を訪ね、8か所をすべて制覇したこと。そして、今年の6月、世界遺産に登録さればかりの「百舌鳥(もず)・古市古墳群」のうち、世界でも類のない鍵穴形(前方後円墳)で、全長486mという最大の仁徳天皇陵古墳を訪ねた話をしました。大阪ではじめての世界遺産ということで、地元は大いに盛り上がりをみせていました。また、「百舌鳥・古市古墳群」が、古墳時代の最盛期(4世紀後半から5世紀後半)にかけて築造された45か所が構成資産とされ、日本の中心が3世紀から4世紀までの大和(奈良)から、4世紀後半から約100年間は、大陸にむかう航路の出発点であった大阪平野に移っていったことへの誇りに満ちているようでした。宮内庁の管轄下の資産が大半だったため、その詳細は謎が多いものでしたが、世界遺産になったことで多くの専門家による内部調査を拒否できず、古代史の解明が一気に進みそうな期待で、会も大いに盛り上がりました。
(文責・酒井義夫)


「参火会」11月例会 参加者
 (50音順・敬称略)


  • 小田靖忠  文新1966年卒
  • 草ヶ谷陽司 文新1960年卒
  • 郡山千里  文新1961年卒
  • 酒井義夫  文新1966年卒
  • 酒井猛夫  外西1962年卒
  • 菅原 勉  文英1966年卒
  • 竹内 光  文新1962年卒
  • 谷内秀夫  文新1966年卒
  • 反畑誠一  文新1960年卒
  • 向井昌子  文英1966年卒
  • 山本明夫  文新1971年卒
  • 蕨南暢雄  文新1959年卒