2017年10月18日水曜日

第36回「参火会」10月例会 (通算400回) 2017年10月17日(火) 実施

「現代史を考える集い」30回目  昭和59・60年「貿易摩擦と情報化社会」




今回は、NHK制作DVD30巻目の映像──
江崎グリコ社長誘拐される・江崎グリコ製品販売中止相次ぐ・森永製菓も脅迫される・青酸入り森永製品ばらまかれる・グリコ-森永事件の犯人グループをとり逃がす・警察官の犯罪相次ぐ・三井三池-有明鉱事故・長野県西部地震・実用放送衛星打ち上げ・INSモデル実験スタート・世田谷で通信ケーブル火災・第三セクターによる三陸鉄道開業・エリマキトカゲブーム・コアラ来日・ロサンゼルスオリンピック・アフリカ飢餓深刻に・全斗煥大統領来日・第2次中曽根改造内閣発足・中曽根首相訪米・創政会発足・田中元首相入院・中曽根首相が外国製品のひとり100ドル購入の呼びかけ・日本電信電話(株)-日本たばこ産業(株)発足・新幹線上野~大宮間開業・国鉄仁杉総裁を更迭・国鉄の分割-民営化を答申・三光汽船倒産・グリコ-森永事件の犯人グループ不二家も脅迫・山口組が竹中組長ら射殺・豊田商事事件・投資ジャーナルの中江元会長ら逮捕・ロス疑惑三浦和義逮捕・横綱北の湖引退・つくば科学万博開幕・阪神タイガース日本一・「いじめ問題」全国に広がる・長野地すべり災害・日航ジャンボ機群馬県上野村御巣鷹山に墜落・中曽根首相靖国神社公式参拝・防衛費GNP1%枠問題・ソ連書記長にゴルバチョフ就任・米ソ首脳会談・第2次中曽根第2回改造内閣ほか約57分を視聴後、この時代を振りかえる話し合いをしました。




後半の30分ほどは、メンバーの山本明夫氏が最近、バヌアツという南太平洋にある国を訪れたそうで、太平洋戦争中の昭和18年に26歳で戦死した軍医だった伯父さまへの慰霊のためで、50年来の念願がかなったそうです。たくさんの写真を投影しながら、その探訪リポートをしていただきました。




なお、今回の「参火会」が、「壱火会」時代から通算400回となったこと、これを記念して来年1月から「世界遺産を考える集い」を行うこと、当面12回分の内容を配布しながら、これを機に、広くソフィアンに働きかけることを確認しあいました。





「この時代の背景」

今回の昭和59・60年という2年間も、前回の昭和57・58年に引き続き、日本経済は、絶好調を維持していました。昭和60年末の世界における日本の数字を見ると、家電製品生産額が世界の50%、新造船量同48%、電子部品生産額同36%、自動車生産台数同33%、コンピュータ生産額同26%という圧倒的な数字を筆頭に、日本が世界の輸出額の10%近いものとなったことで、「世界の一割国家」といわれるほどでした。それは、欧米の先進国との貿易摩擦が、さらに激しいものになっていることを意味していました。

この2年間とも、中曽根首相でしたが、中曽根は60年の4月にテレビで国民に一人100ドルの外国製品の購入を呼びかけるなど、「黒字減らし」の政策を追求し、内需拡大・市場開放などを実行しましたが、貿易不均衡はなかなか縮小しません。

当時、レーガン政権のアメリカは、ドル金利が20%にも達し、日本や西ドイツを中心に世界じゅうの投機マネーがアメリカへ集中していました。そして、輸出減少と輸入拡大により国際収支が大幅な赤字となり、財政赤字も累積していた(「双子の赤字」)に苦しんでいました。

それでもレーガン大統領は、ドルが高いことは、アメリカの強さを示すものと強がり、ドルが高すぎ、円が安すぎる(1ドル=240円前後)ことにはあまり気にかけていませんでした。ところがそうも言っておられず、10%程度のドルの切り下げを決意すると、昭和60年9月22日、ニューヨーク市のプラザホテルで開かれた先進5か国 (G5) 蔵相・中央銀行総裁会議で、アメリカのドル安政策に協力するという「プラザ合意」を発表しました。会議に出席したのは、西ドイツ財務相、フランス経済財政相、アメリカ財務長官、イギリス蔵相、日本の竹下登蔵相の5名でした。以後の世界経済に大きな影響を与えた歴史的な合意でしたが、会議自体はわずか20分程度でした。アメリカ経済が不調になると、世界経済への影響が大きいと、他の4か国がアメリカに同調したことによる声明でした。

「プラザ合意」の効果はてきめん。合意直後の9月24日には、大蔵省と日銀は大量のドルを売って円に両替すると、わずか1日で1ドルは242円から230円という、12円もの急激な円高ドル安になりました。円高基調はとどまるところを知らず、多少の変動はあったものの、1年後には150円台、2年後の年末には120円台と、わずか2年で、円はドルに対しほぼ2倍となりました。これが、バブルのきっかけになったことは、当時誰も予測することができませんでした。




なお、昭和60年に出版された『第三の波』(The Third Wave)が「情報化社会の到来」として、大きな話題になり、世界的なベストセラーになりました。アメリカの未来学者であるアルビン・トフラーが著したもので、人類はこれまでに大変革の波を2度経験してきており、第一の波は農業革命(人類が初めて農耕を開始した新石器革命)、第二の波は産業革命(「工業化社会」の到来)と呼ばれるものであり、これからは、第三の波としてコンピュータ、電話、テレビなどの情報革命による脱産業社会(「情報化社会」)が押し寄せてくる、すでに2~3年前から米・日・西独・英などに始まっていると述べています。インターネットが普及する十数年も前に、「情報化社会」を予見した慧眼に敬服します。
(文責・酒井義夫)



「参火会」10月例会 参加者
 (50音順・敬称略)


  • 岩崎 学  文新1962年卒
  • 小田靖忠  文新1966年卒
  • 草ヶ谷陽司 文新1960年卒
  • 郡山千里  文新1961年卒
  • 酒井猛夫  外西1962年卒
  • 酒井義夫   文新1966年卒
  • 菅原 勉  文英1966年卒
  • 竹内 光  文新1962年卒
  • 深澤雅子  文独1977年卒
  • 反畑誠一   文新1960年卒
  • 増田一也   文新1966年卒
  • 増田道子  外西1968年卒
  • 向井昌子  文英1966年卒
  • 山本明夫  文新1971年卒